国税庁より6月21日、令和5年度の査察の概要が公表されました。
テレビなどでも紹介されている査察制度は、通常の「任意」の調査とは異なり「強制」的な調査であり、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、適正・公平な課税の実現と申告納税制度を維持することを目的としています。
●査察の着手件数等
令和5年度
着手件数 154件
処理件数 151件(うち検察庁告発件数 101件)
脱税額 119億8,000万円(うち検察庁告発 89億3,100万円)
〇処理件数1件当たりの脱税額は、約7,900万円
〇告発率は66.9%となり、令和5年度、告発の多かった業種は不動産業 → 建設業 → 人材派遣業 → 小売業の順でした。
〇令和5年度中の一審判決は83件、全てに有罪判決が言い渡され、そのうち9人に実刑判決、最も重いものは、査察事件単独で懲役4年、他の犯罪と併合されたもので懲役6年でした。
〇脱税によって得た不正資金の多くは現金や預貯金としても保管されていましたが、数千万規模の消費をしていた事例もありました。
【現金の隠し場所】天井裏、階段下収納、蔵に置かれた木箱、銀行の貸金庫
【消費事例】高級車の購入、有価証券等への投資、暗号資産の購入、競馬やカジノ等
●重点事案の告発事例
①消費税事例 27件告発
同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造、架空の課税仕入及び架空の輸出免税売上を計上することで不正に消費税の還付を受けようとした
②無申告事例 16件告発
アフィリエイト事業により収入を得ていたにもかかわらず虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま、法人税を免れていた
③国際事例 23件告発
虚偽の株式譲渡契約書を作成、自己が所有する未公開株式を自らが主宰する外国法人へ譲渡したと装い、未公開株式の譲渡収入の一部を海外法人の収入であるとして、所得税を免れていた
④社会的波及効果の高い事例
インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた
⑤その他告発事例
・医療法人、医薬品製造会社、医療コンサルタント事業者が法人税等を免れていた事例
・太陽光発電設備に関連する事業者が法人税等を免れていた事例
・果樹園農家が所得税等を免れていた事例
・相続財産の現金及び名義預金を申告から除外することで、相続税を免れていた事例
【トピックス】査察の概要
2024-08-08